ぷいぷい!

ぷいぷい! 作者:夏緑
出版社/メーカー:メディアファクトリー

 主人公は寮暮らし。両親は考古学に入れ込んで研究や発掘に生活費をつぎ込んでいる。そのせいで帰省先のはずの家も売られ、主人公は帰る家もない。もちろん貧乏。
 ヒロインはプライドだけは百人前、みんなの前では猫を被っているお嬢様。よくありそうな設定である。
 でも少し違うのは、主人公がお嬢様の執事や召使いになるというのではなく、お嬢様が召使い、貧乏な主人公がご主人様という関係である事。なぜそんな事になっているかというのは帯を見るなり、冒頭を読めばわかるので割愛。当然、タカビーなお嬢様であるヒロインは、プライドが邪魔して素直になれない。その上、ご主人様を庶民呼ばわりするわ、ご主人様に命令するわ、なかなかのお嬢様っぷりを発揮してくれる。ツンデレ&猫かぶりお嬢様はこうでなくてはいけいない。中盤までは、お約束の展開も多いとはいえ面白い。
 だが四章後半以降で、キャラクターの行動と感情に妙なズレを感じるようになる。終盤に近づくにつれそれが次第に大きくなってゆく。主要人物の描写が不十分なためだろうか? 構成上、必ずしもこの巻で登場する必要のない人物もいるように思える。そのため人物の行動が薄く見える。結果として、戦闘シーンや、その結末もご都合主義に見えてしまう。
 不要な登場人物に、不十分な人物描写。それが原因でご都合主義に見える行動や展開。設定はいいだけにもったいないと感じた。