小生物語

作者:乙一
出版社/メーカー:幻冬舎

 書店に寄ったさい、乙一の小生物語がさりげなく置かれていた。そう言えば読んでなかったな。と思い手に取る。まえがきを読んで、ある意味安心すると同時に不安になる。この本を買うな、この本は手抜きだと堂々と書かれている。多分、この文章を読んでWEBやあちこちで叩く人がいるんだろうな、と容易に想像できる。
 で、ぱらぱらとページを捲って、最初と最後だけ立ち読みする。確かに文自体は作者のいう通り手抜きだ。けれども面白そうなので買ってみた。
 内容は、乙一のほら日記。乙一の頭の中に広がる妄想をそのまま文章にしましたという感じ。作者自身は、日記中の人物=乙一という図式ができあがり、変な人と思われるのが苦痛で日記をやめたと言い訳しているが、言い訳になっていない。なぜならそれらの妄想ほら話は乙一の頭の中から生まれたものだからだ。
 妄想には面白いものもあればつまらないものもある。その割合は1:1くらい。変な文章だが、味があるものも多い。
 本人はこんなつまらないものを買うなと言っているが、出来の悪い小説を読むくらいなら、この本を読んだ方がましだという程度の出来は確保している。ただし、乙一特有の酔える綺麗な、それでいて淡々とした文章を期待しているなら買わないほうがいい。
 信者も買わないほうがいいかも。どこからが本当の乙一で、どこからが妄想の小生かを考えるかもしれないからだ。むしろそんなことを考えずに純粋に馬鹿話として楽しめばいい。無名のブログの馬鹿日記を読んだりするのが好きな人にはお勧め。
 数ページに渡る長い文章も所々にあるが、基本的には一ページ。もしくは見開きで一日なので、ちょっとした隙間時間に読める。
 ただし、もう少し安くてもよかったのではないかと思う。それと終わり方はもう少し工夫してほしかった。