GOSICK(5)

作者:桜庭一樹
出版社/メーカー:富士見書房

 トリックについては、これまで同様、大昔の子供向けミステリを読んでいるような気持ちにさせられる使い古されたネタ。だがこの小説はミステリといよりも、時代に流されて生きてきた人々のしがらみと、久城一弥とヴィクトリカがそれに巻き込まれてゆく様を描くのがメインなのかなという気もする。そういう意味ではトリックがどうのこうのと言うことは野暮なのかもしれない。
 今回はっきりした事なのだが、グレヴィール警部が、やたらとヴィクトリカの服に詳しい。一弥がヴィクトリカの服をトランクに詰める場面で、そのパニエはそっちのドレス専用のもので他のドレスとは合わないとか、やたらと注文を付けてくる。ふりふりのレースで着飾らせたビスクドールを持ち歩いて可愛がっていることから考えても、ヴィクトリカの服はやはり警部が選んだものなのだろう。ヴィクトリカの悪行をののしりながらも、彼女の服を選んで妄想を膨らませているのだろうかw。
 ちなみに肝心のヴィクトリカだが、この巻でも前巻や前々巻ほどではないが、ツンデレで小動物的な魅力を振りまいている。そしてアブリルは相変わらず空回りしている。ただし今回はそういった描写は少なめになっている。
 シリーズ全体としては、ようやく鍵となる登場人部が出そろった感じ。