1章〜2章冒頭まで

 良い点は文が非常に読みやすい事と、掛け合い漫才が面白い事です。文の読みやすさは単純に技法的なものですので、ライターさんの文を書く能力は非常に高いのではないかと思います。
 心配する点は主人公のキャラクター設計です。様々な属性が与えられています(ネタバレになるので詳しくは書きません)。
 このような主人公にする利点はライターさんがあらゆるストーリーを書きやすいことでしょうか。様々な属性を持っていますから、思いついた展開のうちどれかを引っ張り出してきても書く際のハードルを低く維持することができます。
 欠点としては、あらゆる行動が考えられるため、どのような展開をもってきても、それほど意外性がないということでしょうか。
 つまり様々な属性をもっているためあらゆる行動をしてもおかしくないし、ヒロインの言動に対し主人公が誘起される感情もあらゆるものを想定することができます。主人公がセリフを言っても様々な解釈が可能です。つまり何でもありという状態です。このようなキャラクター設計では主人公がとった行動に対する読者の感動が薄まるのではないかと少し心配です。
 以上から考えられる以後の展開としては、主人公は自然と周囲の人間関係から排除され第三者的な視点に近い一人称視点になるのかもしれません。
 ただしその場合には主人公視点による感情移入を促すのは非常に難しくなるでしょう。なぜなら部外者として感動的なお話を外から眺めることになってしまう為です。つまり私達読者としては主人公ではなくヒロインの行動に感動する形の話になるのでしょうか。
 どちらにせよ、なぜ主人公をこのようなキャラクター設計にしたのかが疑問に残ってきます。単に正面から主人公を描ききるのが大変だから主人公にあれほど多くの属性を持たせ、行動に幅を持たせられるようにしたのでしょうか。
 それであれば、主人公の行動の意外性や葛藤がなくてもおかしくないし、その部分を掘り下げて描く必要性が少なくて済みます。むしろ掘り下げたら白々しさが残りそうで怖いですし。
 あるいは主人公があらゆる行動をとってもおかしくない人間であればあるほど感動的になるような意外なストーリー展開を見せてくれるのでしょうか? そうであるなら期待大です。
 批判的な事も色々書いてしまいましたが、まだ第1章と第2章の前半までの感想です。読みやすい文だし、ライターさんの文を書く技術は確かだと思うので今後の展開に期待しましょう。