夜市

作者:恒川光太郎
出版社/メーカー:角川書店

 赤地から黒へのグラデーションと緑色の藻を背景に金魚、白い文字という目立つ表紙に誘われて手に取ってみた。
 掲載作品は「夜市」と「風の古道」の二作。
 夜市は日本ホラー小説大賞を受賞した作品らしい。ホラーとは言っても、怖くはない。だが不思議な夜市の雰囲気と、お話の切なさが上手く表現されている。そう言う意味では乙一の作風に近い。
 ただ乙一の作風と異なるのは会話文での誘導が比較的多く洗練されている点。
 帯には後半の展開が予想できないと書かれていたが、私自身はかなり予想できてしまったので、この点はあまり期待しないほうがいい。ただ、予想出来たとしてもいいお話はやはりいい。そういう意味で読んで良かったなと思う。
 風の古道は夜市と比べて斬新さは足りないが、構成は洗練されており、物語の展開がより自然になっているように思える。こちらもやはりちょっぴり切ない話。